「ったく、暑いねぇ」農業をやっているNさんがワイシャツの袖をまくりながら「じつは温室の巨峰が実り始めたんだが、ハクビシンにやられてねぇ」
「ハクビシンって?色白の美人のこと?」Nさんは大笑いだが、ワタシは信州育ちで、そんなものは知らないのである。
なんでも近畿から東海辺りには多数生息していて、作物は荒らすし、屋根裏などに住み着いて、病原菌も運んだりで農家では嫌われ者らしい。
ジャコウネコ科で、体長は50~80センチとかなりでかい。
眉間から鼻の当たりに白いシマがあるから「白眉芯とか白鼻芯と書くのだ」という。
木登りが得意で、夜の温室へ忍び込み、食い頃のブドウを3房ほどもいで「きれいに食っていきやがった!」と地団駄を踏んだ。
このブドウは、ばあさまが挿し木したもので売り物じゃないけど、実に美味い実が生り、今年の初物もそろそろだと「楽しみにしてたところでやられた!」のがくやしい。
「明日はこのくそ暑いのに温室の隙間にネット張りだ。暑くていやだなぁ」
ワタシは、ブドウより、ハクビシンを見たいので、網張りより「罠を仕掛けてとっつかまえてよ」というと「捕まえても始末に困る。あんた貰ってくれるん?」と笑った。
ワタシも、色白美人なら貰ってもいいが、猫じゃ~な。
「ヤッパシ、ネットを張ってください」静かに引き下がった。