水と油
最近、トランプとマスクが仲たがいし見苦しいほどの悪口を言い合っている。
この両者が何故くっついたのか良く分からない人も多かろうと思います。
とはいえ、この結末はおおかた、誰もが幾らかは予想したことではあります。
だって単純に言って、「掘って、掘って、掘りまくれ!」と言ったトランプと、EVをひた走ってるマスクとは水と油だもの。
ともあれトランプは、マスクを「裏切り者」と呼び、「自分の政権時代に多くの恩恵を受けておきながら、今になって批判するのは恩知らずだ」と非難。
「マスクは自分の利益のためだけに動いている」「テスラやスペースXは政府の補助金がなければ成り立たなかった」とXに投稿。
マスクが「大きく美しい法案」を批判したことに対し、「イーロンはこの国の財政や安全保障を理解していない」と揶揄した。
「イーロンにはもはや関わらない」「彼の言うことは信用できない」と突き放す発言行っている。
それに反しマスクの主張と批判は、「トランプは約束を守らず、選挙資金を私的に流用している」と指摘。
「エプスタイン文書にトランプの名前がある」と爆弾発言し、倫理観を疑問視。
「トランプは時代遅れの政治家」「自分のビジネスや国の未来を考えない」と批判。
「トランプの政策は財政赤字を拡大し、イノベーションを阻害する」と主張している。
いまもなお、両者とも、政策論争から個人攻撃にエスカレートしており、SNSのX上では支持者を巻き込んだ激しい応酬が続いている。
「包括的な税制・歳出法案(通称:大きく美しい法案)」
トランプとマスクの仲たがいの経緯を説明すると、トランプが推進する「包括的な税制・歳出法案(通称:大きく美しい法案)」をめぐる意見の対立がある。
包括的な税制・歳出法案(通称:大きく美しい法案)は、トランプ元大統領が推進する数兆ドル規模の大型法案で、税制優遇の延長と歳出削減を軸にしている。
税制面
- 2017年に成立したトランプ減税(所得税減税や児童扶養税額控除など)の恒久化・延長。
- 個人向け・企業向け減税の拡充(例:相続税の非課税枠引き上げ、チップや残業代への課税免除、自動車ローン利子控除の導入、高齢者控除の強化など)。
- インフレ削減法(IRA)で設けられたエネルギー関連税額控除の見直し。
- 雇用者が提供する保育費用への税額控除の強化、有給家族・医療休暇への税額控除の拡大。
- 不法移民への税額控除を不許可とする措置。
歳出面
- 国防費と国境警備費の増額、特に大規模な移民国外追放のための予算確保。
- メディケイド(低所得者向け医療保険)、SNAP(補足栄養支援プログラム)など、低所得層向け社会保障支出の大幅削減。
財政・債務
- 債務上限の4兆ドル引き上げ。
- ・法案成立による連邦政府債務の大幅増加が見込まれ、財政赤字の拡大や米国債利回りの高止まりが懸念されているす。
問題点と議論
減税の恩恵が高所得層に偏る一方、低所得層向けの支援が削減されるため、所得格差の拡大が指摘されている。
財政悪化への懸念が強く、長期的な米国経済の持続性が問われていえう。
この法案は、トランプ政権時代の減税を恒久化しつつ、国防や国境管理に重点を置き、社会保障支出を抑制する内容となっている。
一方で、財政赤字や所得格差拡大への懸念が強く、議会や市場で大きな議論を呼んでいる。
マスクはこの法案について「不快で忌まわしい存在」と強く批判し、財政赤字の拡大や自分の望む内容が盛り込まれていないことに不満を表明した。
これに対し、トランプは「イーロンには非常に失望している」と反発し、マスクの関与する企業への政府助成や契約の見直しに言及するなど、対立が激化している。
さらに、両者の応酬は政策論争から個人攻撃へとエスカレート。
マスクは自身のSNS「X」で「トランプはエプスタイン文書に名を連ねている」と爆弾発言をし、これが決定的な亀裂となった。
エプスタイン文書とは、アメリカの富豪ジェフリー・エプスタインが関与した未成年少女への性的虐待や人身売買事件に関連して、米国の裁判所や司法当局によって公開された大量の裁判資料や証拠文書を指す。
この発言で両陣営の側近らも「もはや後戻りできない」と懸念を強めている。
ゆえにここまでくると両氏の修復の可能性は限りなくゼロに近い。
トランプは「マスク氏と対話する予定はない」と明言し、早期の関係修復に否定的な姿勢を示している。
一方で、マスクも新たな政党設立の必要性を示唆するなど、両者の溝はより深まっている。
また、両者ともに気性が激しく、政策だけでなく個人的な感情やプライドも絡んでいるため、側近が仲介を試みても「電話会談が実現すれば…」という期待はあるものの、実現性は極めて低い状況である。
マスクはトランプの大統領選にいくらつぎ込んだのか?
マスクがトランプの大統領選に巨額の資金を提供したのは理由がある。
おそらくはマスクはトランプを言うがまま動かしたい、あるいは、自分のビジネスあるいは個人に有利となるよう誘導したい欲望があったであろう。
マスクはトランプに、2億6200万ドル(約393億円)つぎ込んだ!
マスクは、2024年の米大統領選で、トランプ氏の支援に少なくとも2億6200万ドル(約393億円)を関連する政治活動委員会(PAC)などを通じて投じた。
この額は2024年選挙サイクルで最大の個人献金となり、特に自身が設立した「アメリカPAC」への寄付が大きな割合を占めている。
また、報道によれば、マスクは月ごとに約4500万ドル(約71億円)をトランプ支援団体に献金する予定だったとも伝えられています。
総額としては、他の主要な報道でも2億3900万ドル(約358億円)から2億7700万ドル(約430億円)といった大規模な金額が確認されている。
この巨額の支援は、激戦州での宣伝活動や戸別訪問、署名キャンペーンなど、トランプ氏の勝利に向けたさまざまな選挙活動に使われた。
トランプに430億円もつぎ込んだマスクの狙いとは?
マスクがトランプ氏の大統領選に巨額の資金を投入した背景には、いくつかの「見返り」や期待があったと考えられる。
政策面での優遇
マスクは「言論の自由」や「銃所持の権利」など、自身の価値観に合致する政策の推進を求めてた。
また、トランプ政権が掲げる規制緩和や減税政策は、マスク氏のビジネス(テスラ、スペースX、Xなど)にとっても有利に働く可能性が高いと見た。
政権内での影響力拡大
トランプ氏は選挙後、新設する「政府効率化省(DOGE)」のトップにマスク氏を起用すると発表しており、マスク氏自身も政権の高官人事に意見を述べるなど、実際に強い影響力を持つことを期待していたと考えられる。
社会的・経済的な地位の強化
マスクが設立した「アメリカPAC」などを通じて選挙資金を提供し、激戦州での有権者動員や世論形成に大きな役割を果たすことで、政界や経済界での発言力をさらに高める狙いもあったと推察される。
自社事業への間接的支援
トランプ政権下での政府契約や補助金政策、規制緩和などが、スペースXやテスラなどマスク氏の事業に有利に働くことも期待していた可能性がある。
総じて、マスク氏は自身の価値観やビジネスの利益に沿った政策実現、政権内での影響力の獲得、そして社会的地位のさらなる強化を「見返り」として求めていたと考えられる。
マスクは職務を成し遂げたのか?
イーロン・マスク氏はトランプ政権下で政府効率化省(DOGE)のトップとして歳出削減などの行政改革を進めましたが、その職務の成果と手法には賛否が分かれている。
職務の達成度
マスクは、2026年会計年度までに政府支出を1,500億ドル削減する見通しを示し、自身の任期中に目標の大半を達成したと主張している。
また、連邦政府職員の大量削減や歳出抑制など、過去数世代で最も大規模な行政改革に取り組んだと評価されている。
批判と反発
しかし、実際の歳出削減額は目標の2割以下にとどまり、成果が十分とは言えない状況だ。
また、突然の大量解雇や強引な手法に対しては政権内外から批判が強まり、無計画な人員削減や現場の混乱が問題視された。
こうした「やりすぎ」や独断的な進め方が、トランプ氏や政権幹部の反感を買う一因となったとみられる。
政権との関係悪化
マスクはテスラの業績悪化もあり、DOGEへの関与を大幅に減らすと発表し、最終的には職務を退任している。
トランプが進める減税法案への批判や政策の食い違いも、両者の関係悪化に拍車をかけた。
マスクは一定の行政改革を断行したものの、手法の強引さや目標未達、そしてトランプ氏との政策対立が重なり、最終的には「やりすぎ」とも受け取られ、トランプ氏の反感を買ったといえる。
トランプはマスクに何を求めたのか?
トランプ氏がイーロン・マスク氏に求めた主なことは、以下の3点に集約される。
政権の重要政策への支持と協力
トランプは自身が肝煎りで推進する「包括的な税制・歳出法案(大きく美しい法案)」や減税政策に対して、マスク氏が公然と反対しないこと、むしろ積極的に支持・協力することを強く求めていた。
特に、法案にはマスク氏の事業にも影響するEV(電気自動車)税額控除の撤廃などが含まれており、トランプ氏はマスク氏の賛同を得ることで政権の一体感と経済界への影響力を高めたかったと考えられる。
政治的な忠誠と資金的支援の維持
トランプは、マス氏が今後の選挙で民主党候補に資金提供しないよう強く牽制している。
もしマスクが民主党を支援すれば「深刻な代償を支払うことになる」と警告し、共和党・トランプ陣営への資金的・政治的な忠誠を求めていた。
政権批判や個人攻撃の自制
トランプはマス氏に対し、自身や政権に対する公然たる批判や個人攻撃を控えることも暗に求めていた。
特にSNS上での批判的発言や、政権の方針に反する行動が続けば関係修復は困難であるとの姿勢を明確にしている。
まとめると、トランプはマスクに「政権の政策への協力と賛同」「資金面での忠誠」「公然たる批判の自制」を求めていたと考えられる。
これらが守られないとみたトランプはマスクに対して強い警戒と反発を示すようになった。
トランプの本心
トランプと決別したマスクは新党立ち上げを示唆している。
が、トランプが最も警戒する事案は、マスクの資金力が民主党に流れることである。
そもそもトランプが、イーロン・マスクを政権内部に取り込んだ大きな理由のひとつは、マスクの巨額の資金力が民主党側に流れることを強く警戒したためと考えられる。
実際、トランプはマスクに対し「今後の選挙で民主党候補に資金提供しないよう」牽制し、共和党・トランプ陣営への資金的・政治的な忠誠を求めていた。
もしマスクが民主党を支援すれば「深刻な代償を支払うことになる」と警告したという報道もある。
また、マスクのような巨大な影響力と資金力を持つ人物を政権の中枢に置くことで、経済界やテクノロジー業界の支持を確保し、政権の安定や政策推進力を高める狙いもあった。
このように、トランプの本心は「マスク氏の資金や影響力が敵対勢力に渡るのを防ぐ」という計算があったとみて間違いない。
異常を鑑みると、トランプとマスクの仲たがいは当然の流れであった。
トランプはマスクの資金力を警戒し自陣に引っ張り込むことに寄りみマスクの手足を縛った。
マスクはマスクで政権を誘導し、自身に有利な政策を打ち出したい腹があった。
両者の関係はとても盟友などという美談ではない。狐と狸のばかし合いだったように見える。
トランプから見れば、マスクはジョーカー(切り札)のつもりが、とんだ婆を引いたことになる。